限界庶民の田熊は体外受精にステップアップしたからとて(からこそ?)仕事を辞めるわけにはいかず、採卵周期も普通に出勤。
会社には通院での早退や中抜けの許可は得ていましたし、体外受精に進んだ時のためにあらかじめ仕事内容や勤務地を変更してもらっていたので特に無理をする場面などなく働かせてもらっていました。
がしかし、そこまで環境を整えたにもかかわらず、自己注射を始めてすぐに治療と仕事両立の危機が訪れました。
圧倒的集中力欠如。
気を抜くと「今日家に帰ったら注射打たなきゃな」という意識で頭の中が占められいつの間にか仕事の手が止まっているのでした。
労働を妨げる要因は精神的なものだけではありませんでした。
明らかに眠い。
異様に眠い。
それまで仕事中に眠気に襲われたり居眠りをしたりすることがなかったのですが、自己注射をはじめて数日経った頃から日中異様な眠気に襲われるようになりました。
田熊の仕事はもはや眠気との闘い。
労働どころではない。
ただでさえ不妊治療優先でワガママを通している中、職務怠慢でクビになるわけにはいかない田熊は勤務中、周りに人がいる時に「全然眠くありませんけど?」という表情を作ることに全力投球することとなりました。