【妊娠初期5】食べづわり


田熊の妊娠7週目は出血による自宅安静と同時に食べづわりの幕開けでした。
お腹が空くと気持ち悪いとはこれいかに、とそれまで想像できていませんでしたが実際に自身の身体に起こるとそれは事前に想像できるはずもない全くの新感覚なのでした。
お腹が空くと、という表現は少し異なっていて、常にお腹が空いていました。
その空腹感は非常に不快なもので、精神が胃の不快感に集中してしまい他のことが考えられなくなってしまうのでした。
発狂しそうな空腹感を解消しようと食べ物を口に入れるわけですが、食べ物ならなんでもいいというわけでもなく、田熊は野菜と肉・魚、甘いお菓子を全く食べたいと思わなくなりました。
パンとおにぎり、ゼリー、塩煎餅、たこ焼き、そしてなぜかモスバーガーが田熊の食事となりました。
(なぜかモスバーガーの肉は食べられる。謎)
空腹感を紛らわすため、昼間はおよそ1時間ごとに何か口にしました。
そのたびにベッドから移動するわけにもいかないので食べたいものはおっくんにリクエストして仕事帰りに買ってきてもらいベッド横に置いた紙袋に補充しておき、耐えられなくなると身体を起こしてベッドの上で食事をとりました。
夜中も空腹で目が覚めるので、枕元に置いてあるおっくん作の小さなおにぎりを目が覚めるたびに一つずつ暗闇の中で貪りました。
それまでの不妊治療期間でとってきた健康な食事から一転、田熊の食生活は時間も間隔も栄養もめちゃくちゃになりました。
田熊は不快な空腹感とひどい食事内容への罪悪感に苛まれながら、そのとき初めて自分の身体に何かが起こっていることを確信したのでした。