採卵④の胚盤胞ゼロ結果の精神的ダメージが思いのほか大きく治療を休みたい気持ちはあったのですが、あと半年と迫る35歳の誕生日への焦りの方が勝ち、休憩を入れずまた採卵周期に入りました。
前回同様卵の育ちがゆっくりで、注射を追加するごとに田熊の心の余裕はなくなっていきました。
そしてついに事件が起きました。
田熊は採卵周期にはおっくんに禁酒を言い渡していました。
精液検査では男性不妊ではないと言われたものの運動率の低さが気になっていたし、精子の質を可能な限り良くしてほしかったからです。
当初は嫌がっていたおっくんも、採卵周期に田熊がいかにして卵子の質をあげようと努力しているかを説くと採卵周期の間だけでも禁酒することを納得してくれたのでした。
5回目の採卵に向けてホルモン補充を開始して10日ほどたったある日、田熊がおっくんの作業部屋のドアを開けるとおっくんがパソコンのモニターの裏にあきらかに不自然に何かを隠しました。
田熊はすぐさまモニターの裏を確認。
そこにはウイスキーの入ったコップが置いてあったのです。
胚盤胞ゼロを避けるために食事、運動、睡眠、ストレス全てに気を回しおっくんのサプリも管理し万全の態勢で挑んでいるつもりでした。
ホルモン補充も後半にさしかかり、いつ採卵日が決定してもおかしくない。
そんな中発覚したおっくんの隠れ飲酒に田熊はブチ切れ、おっくんに酒瓶の中身を流しに棄てさせました。