いざ、人工授精本番。
ドラマとかでよく見る手術台に寝て足を開いた田熊の股の奥を塩先生は何やら器具で素早くゴイゴイ広げました。
と、次の瞬間、ズギュン!と子宮の奥を撃たれたような衝撃と痛みが走りました。
事前に読み漁ったあらゆるレポにあった「痛くなかった」「拍子抜けするほど痛くなかった」「すごい楽チン」という感想たちから人工授精術にイージーなイメージを抱いていた田熊は突然の裏切りに面食らいました。
「はい、終わりでーす。このあと排卵を促す注射を打って、次は生理がきたらまた10日後に来てください」
と言い残し塩先生は部屋を出て行きました。
看護師さんにされるがままに足を真っ直ぐに戻し、手術台に角度がつき足が上がり、そのまま安静にするよう言われじっとしていました。
5分後、安静が解かれ脱いでいた服を着て、看護師さんに排卵を促す注射を打ってもらってクリニックを後にしました。
処置室に入ってからクリニックを出るまでものの15分。
人工授精後はそのまますぐに出社する予定でしたが、下腹部がズーンと痛むのと脳が若干パニックを起こしていたので、ゆっくり歩きながらひとまず近くのカフェへ向かいました。