塩先生が到着すると胚移植はあれよあれよと進みました。
看護師さんが田熊の腹にエコーの器械を押し付け、塩先生が田熊の股の奥をゴイゴイ広げて何か(たぶん管)を奥まで入れ、なんかちょっと「しん…」と5秒くらいの間があったのち、塩先生が唐突に
「オッケー」
と大きめの声で言ったと思ったら隣の部屋の扉がガラッと開いてさっきの胚培養士さんが入ってきました。
おそらく卵を子宮に戻したのだと思いますが仰向けの田熊からは見えないしお腹の中も何も感じず、股の奥を広げていた器械が抜かれてはじめて
「あ、終わった?」
と気がつきました。
緊張で力が入っていたらしく、ふと右手を見ると胚培養士さんにもらった胚盤胞のチェキがクシャクシャになっていました。
その後は人工授精のときと同じで、足を閉じて5分ほど安静にしたのちいそいそと服を着て帰りました。