採卵のため処置台に上がり、右腕に点滴、左腕に血圧計の管を生やし身を横たえていると、看護師さんの
「痛み止めを入れますね」
の声と共におそらく右の点滴から身体へ痛み止めが注入され、鼻の中にハッカを突っ込まれたかのように喉の奥がめちゃめちゃスースーしだしました。
意識はあるのですが頭がぼんやりし、周囲で繰り広げられている会話が右耳から左耳に抜けていき内容の半分も理解できなくなりました。
初めての感覚に「なんじゃこりゃ!」と動揺しているうちにガラリとドアの開く音がして
「お待たせしましたー」
と聞き慣れた塩先生の声がしました。
「麻酔お願いします」
の次に
「それでは採卵術を始めます」
と塩先生の宣言が聞こえ、ついに麻酔!眠くなるのか?と待ち構えた次の瞬間、
「消毒しまーす」
という声と共に股の入り口をゴイゴイ広げられ、すごい勢いで何かが出し入れされ始めました。
わたしは今、疲れて仕事から帰ってきて一刻も早く一息つきたいと頭の中で唱えながらもかろうじて残っていた力を振り絞ってその日使った水筒の中を柄つきスポンジでゴシゴシ洗っているときのテンションで、めちゃめちゃ膣を洗われている…!
もしかして、すでに麻酔が効いて意識がないと思われているのでは!?
このままでは覚醒したまま痛いことが始まってしまうのでは!?
引き続き稼働率(体感)5%くらいのぼんやりした頭で危険を察知した田熊はなんとかまだ麻酔が効いていないことを伝えなければ、と言葉を発しようとしました。
そこで意識が落ちました。