庶民的不妊録

生活が不安定なのに不妊治療沼にはまる夫婦の漫画ブログ

【採卵1回目6】空砲

麻酔後の二日酔いのような気持ち悪さを抱えたままリカバリールームから内診室へ移り、いつもの内診用の椅子に座りました。

塩先生に膣に入っていたガーゼだか綿だかを抜かれ(入っていたことに気づきませんでした)、中を消毒され、ヨロヨロと服を着て隣の診察室へ移るとそこにちぢこまったおっくんがいました。

田熊が椅子に座ると同時に塩先生は開口一番こう言いました。

「採卵の結果、採れた卵は2個でした」

 

 

2個?

 

「え、少ない」

頭がグラグラして理性が飛びかけていた田熊は思ったことをそのまま口に出していました。

「10個以上、卵胞が…」

採卵前の最後のチェック時、右の卵巣に7個、左の卵巣に6個の卵胞が確認されていたはず。

塩先生も「めちゃめちゃいい感じ」と言っていたはず。

 

ショックを隠す余裕のない田熊に塩先生は説明を続けました。

塩「卵胞はたくさん育っていたんですけどね、吸い出した卵胞液の中に卵がないいわゆる空砲という状態でした」

田「クーホー?」

塩「充分に育った卵胞に針を刺して中の液を卵ごと吸い出すのですが、そこに卵が入っていないんです。吸い出してみないとわからないのでたくさん針は刺したのですが、ほとんどが空砲でした」

田「原因は?」

塩「空砲は原因がはっきりわかっていないんです」

 

毎日自己注射がんばったのに、麻酔でこんなに具合悪くなってるのに、たった2個…!

誰に向けたらよいかわからない怒りがフツフツと湧き起こり、同時にどうせ自分の身体がポンコツなせいなんだろうという情けなさで目がかすみ、グラグラした頭の中はさらにパニックを起こし言葉を失いました。

 

塩「空砲は誰にでも起こりうることです。今回は空砲でも次は全然空砲がなかったりすることもあります。とりあえず今回は2個卵子が取れたのでこれを受精させましょう」

 

そうでした、2個は取れたのでした。

田熊は一旦頭の中のパニックを押さえ込んで、かろうじて取れた2個の卵に集中することにしました。

 

※ここで書いていることはあくまで田熊の2022年7月の採卵の思い出話です。医療的なことについては先生によって見解が違ったりその時々の研究で変わったりするので、最新の正しい情報は専門のお医者さんに確認してください。