胚移植翌日から判定日までの2週間、田熊は塩先生から、子宮内膜を厚くし着床をサポートするための中容量ピルを飲むよう言われました。
薬の説明の際、
「人によってはこの薬を飲むとすごく気持ち悪くなってしまう場合があります」
と普段塩対応の塩先生が珍しく眉間に皺を寄せて言いました。
すごく気持ち悪くなるか、全くなんともないかのどちらかに分かれるそうで、すごく気持ち悪くなる場合はその薬を中止して別の薬に変えるということでした。
あの塩先生がここまで言うのだから副作用はとんでもないものなのだろうと心して診察室を後にしました。
薬の服用開始日。
田熊は寝る前の準備を全て終わらせ、おっくんに薬の副作用のことを充分に説明し、意を決して小さな錠剤を水で胃に流し込みました。
30分、そのまま食卓で静かに過ごしていましたが体調に変化はなし。
寝室へ向かい、念の為ベッドの横にゲロ桶を設置して就寝しました。
目覚めるといつも通り次の日の朝になっていました。
なんならちょっと爽やかな目覚め。
そのまま出勤しましたが体調におかしなところはなく、つまり田熊はラッキーなことに薬を飲んでも全くなんともない方に入れたのでした。