工芸の会社で働く田熊は普段から母や祖母世代のマダムたちと接する機会が多いです。
高度経済成長期からバブル時代までさまざまな栄枯盛衰を見届けてきたせいなのか、子を立派に育て世継ぎ闘争を勝ち抜いてきたせいなのか、それとも高所得者層という階級の人たちの余裕なのかなんなのかよくはわかりませんがみなさんいつもにこやかで心穏やかで人生を楽しんでいる素敵な人たちなのです。
そんな優しいマダムたちなので決して他意はなかったと思うのです。
ひと月で4回も…
しかもそれぞれ違うマダムから…
「あら、おめでた…?」
というワードを引き出した田熊。
初めて聞いたときはみぞおちをえぐられるような衝撃を受けました。
おめでたくなりたくていろいろしてるけれども成果が出ずただ肥えただけでお腹の中には脂肪しかないことに対して抱えていた羞恥心と劣等感を再確認させられた瞬間でした。
あやうくマダムのお召し物に吐血するところでした。
確信をもって、細心の注意を払って、少し華やいだ口ぶりでコソコソッと聞くマダム。
全力で否定する田熊。
焦り謝罪するマダム。
永遠に「いえいえ〜」と言い続ける田熊。
この地獄を4回繰り返したのち、早急に減量に取り組むことを心に固く誓いました。