採卵周期、最終通院日。
田熊の右の卵巣に7個、左の卵巣には6個の卵胞が育っており、塩先生からは
「めちゃめちゃいい感じです」
のお言葉をいただきました。
排卵のトリガーとなる最後の自己注射の説明の後、塩先生は
「念の為検査をしていたAMHの結果が出ました」
と用紙をピラリと取り出しました。
「卵子の数は女性が生まれたときが一番多くて年齢とともに減っていくのですが、AMHを調べることでいまどのくらい卵子が残っているかを知ることができます。田熊さんは平均ですね」
そこでAMHの話は終了となりました。
AMHは平均、卵胞の育ちは上々、精子は怪しい時もあるけど2名の医師から問題なしの判断。
この時点で田熊は原因不明不妊にカテゴライズされていました。
人工授精までは原因不明でも、体外受精では培養士さんによる受精とその後の移植での着床と、工程が2段階にはっきりわかれるのでどの段階でエラーが出るかによって原因が特定できることもあると田熊は何かで読んでいました。
ここまで何の原因もなく陽性反応が一度もないということは受精障害か着床障害があるのではとふんでいた田熊は、もうすぐその原因が突き止められるかもしれないという期待に胸が高鳴っていました。
原因を突き止めさえすれば、然るべき治療をして、妊娠できるはず…!
と、わりと前向きな1度目の採卵がついに始まろうとしていました。